今回のテーマは不動産売買の際に耳にする「手付金」に関してです。
「契約する時にいくら払わなければならないの?」
「手付金は払わないといけないの?」
不動産購入が現実になった時、突然の出費で不安になられる方は大変多いです。
1万円、2万円でなく、桁の違う出費なので、当然の事です。
手付金の取り決めは必ずおこなわれます。
手付金0円契約はありません。
手付金に関して疑問を持たれている方は、是非この内容を一読してください。
不動産営業マンとしてこの仕事にたずさわるようになった時、最初に教わったことが物件案内から商談、購入申込までの営業の流れでした。
乱暴に言えば、「契約を取る」までの仕事を教わりました。
契約が取れれば、その先は上司にバトンタッチしていたからです。
この購入申込手続きの中に、今回のテーマ「手付金」が出てきます。
手付金とは
不動産売買契約締結時に売買代金の一部として支払われる金額を ”手付金” と呼んでいます。
契約日から一定期間内(1週間から1ケ月程度が多いです)、及び売主・買主の履行の着手前であれば売主は買主に手付金の倍額を支払い、買主は手付金を放棄して契約を解除することができます。
売買契約書に記載される「手付解除」に関する条項になります。
売買代金の一部ですので、引渡し(決済)時には、売買代金から支払い済の手付金を差し引いた残代金を売主に支払うことになります。
(例1)
売買代金 | ¥30,000,000円 | 買主から売主に支払われる金額 |
手付金 | ¥1,000,000円 | 内、契約締結時に支払われる金額 |
残代金 | ¥29,000,000円 | 内、引渡時に支払われる金額 |
売買代金 = 手付金 + 残代金
売買代金は、手付金と残代金で支払われます。
但し、手付金を受領後、引渡し前までの間に「中間金」と呼ばれる売買代金の一部に充当する代金の支払いをおこなう場合もあります。
(例2)
売買代金 | ¥30,000,000円 | 買主から売主に支払われる金額 |
手付金 | ¥1,000,000円 | 内、契約締結時に支払われる金額 |
中間金(1) | ¥1,000,000円 | 内、●月●日までに支払われる金額 |
中間金(2) | ¥2,000,000円 | 内、●月●日までに支払われる金額 |
残代金 | ¥26,000,000円 | 内、引渡時に支払われる金額 |
売買代金 = 手付金 + 中間金(1) + 中間金(2) + 残代金
ちなみに、手付金と中間金は意味合いが異なりますので、手付解除の際には支払い済の中間金は買主に無利息で返還されます。
手付金を支払う必要があるのか
契約時に必ず手付金が支払われているのかと言えば、答えはノーです。
契約・決済(引渡し)が同日の場合は、手付金を取り決める必要がありません(契約後すぐに売買代金の支払いがあるため)。
また、契約は当事者(売主・買主)の合意により成り立っているので、合意があれば手付金の支払いをおこなう必要がありません。
しかし、契約日と決済日が異なる場合は、基本的に手付金(手付解除)の取り決めをおこないます。
手付金の取り決めがないと、契約が不安定なものとなってしまうからです。
例えば、売主側からの手付解除の場合です。
契約締結後に現れた第三者が、買主(契約金額)より高く購入するとの意思表示をしてきました。
手付金の受領がないので、売主は買主に契約解除の申し出(手続き)をするだけで、新たな買主と契約することが出来ます。
一方、買主側からの手付解除の場合も同様のことが言えます。
契約締結後に別の物件を気に入った場合、売主に契約解除の申し出をするだけで、新たな物件を購入することが出来ます。
手付金の取り決めがない為に、安易な手付解約(ペナルティーなし)が可能になってしまいました。
その為、契約日と決済日が異なる場合は、基本的には手付金の取り決めをおこない、安易な手付解除を防ぐように営業マンが買主と調整しています。
手付金はいくら支払えばよいのか
売主が宅地建物取引業者以外の場合には、手付金の金額に規定はありません。
基本的には宅地建物取引業者が買主と話し合い、買主が支払える金額を決めています。
多くの宅地建物取引業者は、引渡し前であることと登記手続きがなされていないことを理由に、高額な手付金の支払いはおこなわないように調整しています。
上限は売買代金の10%相当額を目安として、10万円単位のきりが良い金額、下限は10万円以上としているケースが多いです(契約を不安定にさせない為、下限を上げる業者もおります)。
売主 | 手付金の額 ※ 一般的な場合 |
宅地建物取引業者以外 | 10万円(下限) ~ 売買代金×10%(上限) |
一方、売主が宅地建物取引業者の場合には、手付金(手付金等)の金額に規定があります。
手付金等を受領しようとする場合、その額によっては保全措置を講じる必要があるからです。
一般的には高額な手付金の受領を避けるため、保全措置を講じる必要がない金額を上限として、手付金の金額を買主と調整しています。
保全措置を講じる必要がない金額とは、未完成物件と完成物件の場合とで扱いが分かれます。
◆保全措置を講じる必要がない金額(①かつ②の場合)※2つの条件を満たす
手付金等の金額 | 未完成物件 | 完成物件 |
条件① | 売買代金の100分の5 (5%まで) |
売買代金の10分の1 (10%まで) |
条件② | 1,000万円以下 |
この2つの条件を満たす手付金等の金額であれば、保全措置を講じる必要はないのです。
売主が宅地建物取引業者の場合には、10万円以上、上記金額を上限として、手付金の金額を調整するケースが多いでしょう。
今回は、手付金に関して取りまとめてみました。